コミティアの開催中止で考えた、自分にとってのコミティア

コミティアの開催中止で考えた、自分にとってのコミティア

コミティア133の中止

昨日の夜、サークル参加を予定していたコミティア133の開催中止が発表されました。

2020年9月21日 COMITIA133開催中止のお知らせ

現在の東京の状況では中止や延期になっても仕方ないかな…と、ある程度は構えていたにも関わらず、いざ中止になってみると思ったより落ち込んでいる自分に気づいてびっくりしています。

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自分にとってのコミティア

そもそも自分がオリジナルの漫画を描き始めたきっかけがコミティアでした。10年ほど前、ゲーム会社の社員になって数年たち、仕事にも慣れて久々に同人活動とかしたいな〜同人誌とか描いたり読んだりしたいな〜と思い、なんとなく一般参加してみた即売会。(二次創作も含むコミケやシティには何度も行ってましたが、一次創作オンリーのイベントに行ったのはその時が初めてでした)
そこで購入したオリジナル同人誌は、商業誌並みのクオリティの高いものから荒削りな作品まで様々でしたが、書き手の好きなものや描きたいものが詰め込まれていて途方も無い熱量や魅力に溢れていました。

「自分もこういう本を作りたい!」

「好きなものを漫画にして、色々な人に読んでもらいたい!」

そんな思いで次のコミティア90にサークル参加の申し込みをしました。映画が大好きだったので、古い映画を上映する名画座を舞台に、とにかく思いつくネタを4コマとか数ページの漫画にしてなんとか16ページの本を作りました。その頃、会社のプロジェクトがグラフィックのマスター前で平日は24時帰宅で土曜も出社とかしてた気がしますが…あの頃は若かった。今はどう考えても無理です。夜は寝たいし休日は休みたい。
それはさておき、いま見返すと大変拙い出来の本でもありがたいことにぽつぽつと手にとって貰えて、感想もいただけました。

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↑初めて個人で出した創作同人誌『西浦キネマ通り』のキャラクター。
 館長(左)ともぎり子(右)

「自分の好きなものをただ描くのではなく、知らない人にも楽しんで読んでもらうにはどうしたらいい?」

「初見の人にも本を手にとってもらうにはどうすれば?」

そんなことを、少しずつ意識して描くようになったのもコミティアに定期的に参加するようになってからでした。(しっかり考えるようになったのは仕事として漫画を描き始めてからですが…)

仕事として雑誌に漫画を描くようになったのも、コミティアで本を購入してくれた編集さんが「うちの雑誌に描きませんか?」とメールをくれたからです。そして応援してくださった方々のおかげで単行本が発売され、いまでも細々とですが専業で漫画を描いて生活することができています。

コミティアと、そこで本を手にとってくれた方々がいなければ漫画家の「にしうら染」は存在していなかったし、自分が今まで描いてきた作品も生まれることもなかったでしょう。

また、漫画の仕事で行き詰まった時も「コミティアで自分の好きな漫画描こう!」新しいジャンルや作品に挑戦したくなったら「次のコミティアでこんな本だそう!」そんな風に考えて同人誌を作ることで、自分は漫画を描くことを10年以上続けてこれました。コミティアは、自分にとって描きたい、作りたい気持ちに正直でいられる場所なんです。

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同人誌を作って即売会に参加する意味

描いた漫画を読んでもらいたい、というだけなら、わざわざ同人誌にしてイベントで頒布しなくても、SNSにアップするほうが手軽に大勢の人に見てもらえるかもしれません。でも自分は、漫画を描いて、そのパッケージ(表紙やロゴ)を考えて、告知方法やタイミング、イベントでのディスプレイをあれこれ検討して、興味を持ってもらい、作った本を届ける。そこまで含めてやりたいことなので、即売会に参加して同人誌を作っています。(現在は主に通販で頒布してます)

そして足を運んでくださった方々や、会場で興味を持ってくださった方々に本を手にとってもらう喜び。「この本、面白かったです」と目の前にいる人から作品へのレスポンスをもらえる感動。それは通販や書店委託ではどうしても得られない体験です。

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コミティアに願うこと

コミティア133の中止が決まった時に思っていた以上にショックを受けたのは、自分にとって思い出深く大切な存在であるその場所が、継続が危うい状態に近づいていることを実感したためでした。(詳しくはコミティア公式サイトの「コミティア継続に向けたクラウドファンディングの実施について」のページを読んでください)

現在の状況下で大規模なイベント開催が難しいことはよくわかりますが、コミティアはどんな形でも継続し続けてほしいと心から願っています。

8月末から今後のコミティアの開催継続をかけてクラウドファンディングを実施するそうなので、微力ながら協力しつつ、今は家で原稿を進めて同人誌を作り続けたいと思います。
次に開催されるコミティアに参加できる日を、足を運んでくれた人に本を手にとってもらう日を心待ちにして。

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