【告知】印象派コラム&イラスト第三回 – サロン(官展)と印象派展について

【告知】印象派コラム&イラスト第三回 – サロン(官展)と印象派展について

アーティゾン美術館で2021/1/10まで開催中の 石橋財団コレクション選「印象派―画家たちの友情物語」展。そのスペシャルサイトで「印象派の画家たちの友情を育んだ出会い、交流の場」をテーマに書いた印象派コラム&イラストの第三回目が公開されました。
よろしければサイトにてご一読ください

第三回目はサロン(官展)と印象派展について。

モネやルノワールをはじめとする「印象派」について語る上で、外せないキーワードとなるのが「サロン(官展)」と「グループ展(印象派展)」です。

サロン(官展)はその名の通り、政府主催の美術展覧会。19世紀フランスの若い芸術家が名を上げるためには、まずその展覧会で入選する必要がありました。サロンの開催は一年に一度なので、芸術家たちは毎年サロンに向けて力作を製作します。ですが、その審査基準は保守的なもので、モネやルノワールなどの(当時としては)前衛的な作風の画家たちは、なかなか入選までいかず数年続けて落選…ということも。

「このままでは自分たちが認められる日なんていつまで経っても来ない!サロンに頼らずに、直接人々に作品を見てもらい、購入してもらえる場を作ろう!」とモネたちが中心になって始めたのがグループ展(正式名称は「画家、彫刻家、版画家などによる共同出資会社の第1回展」)でした。

しかし、苦労して仲間や資金を集めて開いた第一回目のグループ展の評判は散々。その後もグループ展は回を重ねて8回まで開催されますが、モネやルノワールは生活のため…と時にはグループ展への参加を休み、その一方でサロンにまた作品を出品したり…と様々な道を模索し続けます。
イラストの中でモネがサロン(官展)」と「グループ展(印象派展)」の間で頭を悩ませているのはその辺りを意識したものです。

ちなみに、拙作『モネのキッチン』でも2巻収録の第10話で第一回グループ展開催のために奔走するモネたちの姿を描きました。

出典:にしうら染『モネのキッチン 印象派のレシピ』2巻(秋田書店)

以下はおまけ。2019年にパリに滞在した時に、第一回目のグループ展の会場となった建物を見てきました。

今は洋服店になっているこの建物、19世紀にはナダールという写真家のアトリエでした。
当時の写真↓

Atelier Nadar 35BoulevardDesCapucines 1860 Nadar
Nadar, Public domain, via Wikimedia Commons

↑これは向かいの道路から、少し離れて撮った写真

1階や上の部分は少し様子が変わっていますが、特徴的な2〜4階の窓は当時に近い姿が残っていますね。
ここの2階で「画家、彫刻家、版画家などによる共同出資会社の第1回展」が1874年4月15日から5月15日まで開催されました。

ちなみにサロンの会場として使用されていたのは、シャンゼリゼ通りに面した場所に1855年のパリ万国博覧会のために建設された産業館(Palais de l’Industrie)という建物。産業館は1900年のパリ万国博覧会の会場となるグラン・パレを建てるために1897年に取り壊されたので今はもう残っていません。

「印象派―画家たちの友情物語」展の印象派イラスト&コラム、最後の更新となる第四回は12/17(金)公開予定です。次回も読んでいただけたら幸いです。

にしうら染 2021.11.27

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